性感染症

先天梅毒の赤ちゃんの見た目は?症状や原因、赤ちゃんの将来についても解説

先天梅毒(せんてんばいどく)は、赤ちゃんにさまざまな症状を起こし、水ぶくれのような発疹や赤黒い発疹など、見た目の変化が起こることがあります。

先天梅毒の症状ってどんな感じ?見た目や将来もどうなるか気になる…。

と、不安でいっぱいになっている方もいるかもしれません。

本記事では、以下について解説します。

  • 先天梅毒の原因
  • 先天梅毒にかかった赤ちゃんの見た目や症状
  • 先天梅毒にかかった場合の経過

先天梅毒にかかった赤ちゃんが、少しでも早く適切な治療を受けられるように、保護者が先天梅毒への理解を深めていきましょう。

目次

そもそも先天梅毒とは

先天梅毒(せんてんばいどく)とは、梅毒トレポネーマという細菌によって引き起こされる多臓器感染症です。

先天梅毒は、梅毒に感染している妊婦から胎盤を通じて赤ちゃんにうつることがわかっています。

梅毒自体、年々増加しており、梅毒に罹患した妊婦も、2023年には全国で約400例と過去最高の罹患数となっています。

参考:梅毒の発生状況について.厚生労働省

妊娠中に梅毒に感染すると母児に影響が出る

妊娠中に梅毒に感染すると、母体には流産や死産のリスク、胎児・新生児には先天梅毒に罹患するリスクがあります。

母体流産、死産のリスクが高まる
胎児・新生児妊娠5ヶ月以降、胎盤を通じて梅毒がうつる可能性がある(先天梅毒のリスク)

2023年に梅毒と診断された妊婦のうち、流産に至ったケースは3例、死産に至ったケースは9例報告されています。

参照:感染症発生動向調査に基づく妊娠中の女性における梅毒の届出、2022~2023年|国立感染症研究所

ただし、感染症発生動向調査での届出が義務化されていないことから、梅毒にかかった妊婦や流産、死産に至ったケースはさらに多い可能性が考えられます。

また、母体が梅毒にかかることで先天梅毒のリスクが上がります。これは、胎盤自体が妊娠16週ごろ(生後4ヶ月末~5ヶ月初め)に完成するためですが、必ずしも、妊娠5ヶ月以降に感染が限定されるわけではありません。

妊娠全期間を通して、先天梅毒のリスクがあることから、早期検査と適切な治療が必要です。

先天梅毒の原因は梅毒トレポネーマ

前述のとおり、先天梅毒は梅毒に感染した母体から胎盤を介して、胎児に梅毒トレポネーマが感染することで発生します。

そもそも、梅毒の主な感染経路は、性行為や肛門性交や口腔性交などの粘膜接触で、梅毒に感染した人の皮膚や粘膜からの分泌液、血液などが感染源といわれています。

そのため、不特定多数との性的接触を避け、感染の疑いがある場合は、早期に検査や治療を受けることが大切です。

もし、毒に感染した母体の治療が出産の4週間前までに行われなかった場合は、胎児の感染を完全に防止できない可能性があるため注意しましょう。

参照:先天梅毒.MSDマニュアルプロフェッショナル版

先天梅毒の見た目は水ぶくれのような発疹や赤黒い発疹

※写真はイメージです※

先天梅毒は、主に水ぶくれのような発疹や赤黒い発疹など、皮膚に症状が現れることが多いですが、全身にも症状が現れることがあります。

症状が出るタイミングは以下のとおりです。

  • 生後3ヶ月以内に症状が現れる「早期先天梅毒」
  • 生後2年以降に症状が現れる「晩期先天梅毒」

時期別の症状について、詳しく解説します。

早期先天梅毒の症状

出生時には、6~9割の新生児が無症状です。しかし、通常生後3ヶ月までに皮膚症状や全身症状が現れる場合もあり、2歳未満までに発症した場合は「早期先天梅毒」とよばれています。

皮膚症状・水ぶくれのような発疹(梅毒性天疱瘡:ばいどくせいてんぽうそう)
・赤黒い発疹(手のひらや足の裏にできやすく、次第に暗赤銅色になっていく)
・口や鼻、肛門周囲に平らなイボができる
全身症状・全身のリンパ節が腫れる
・肝臓や脾臓が大きくなる
・骨の形状や成長の異常など
その他の症状・鼻炎
・貧血
・黄疸 など

早期先天梅毒の症状の中でも早期にあらわれるものが、皮膚症状や鼻炎です。

適切な治療が行われない場合、ごく稀に、梅毒性脳軟膜炎(ばいどくせいのうなんまくえん)や髄膜血管性梅毒(ずいまくけっかんせいばいどく)といった神経梅毒があらわれる可能性がありますが、約4割は無症状といわれています。

早期発見と、早い段階で抗生物質であるペニシリンを使用した治療を行い、症状が悪化しないよう努めることが大切です。

参考:先天梅毒診療の手引き2023

晩期先天梅毒の症状

晩期先天梅毒は、生後2年以降に症状が現れることが特徴で、梅毒の治療をしていない母体から出生した約4割が発症するといわれています。

皮膚症状・口や肛門周囲の亀裂、ゴム腫
全身症状・Hutchinson(ハッチンソン)の3徴候
 ①Hutchinson歯(切歯の形成異常)
 ②感音性難聴
 ③実質性角膜炎
・前頭の突出や鞍鼻(あんび:鼻の変形)といった特徴的顔貌 など
その他の症状・知的障害
・水頭症
・骨格異常 など

晩期先天梅毒の代表的な症状として、Hatchinton(ハッチンソン)の3徴候が特徴です。

晩期先天梅毒でも、抗生物質であるペニシリンを使用した治療が行われます。

一方、晩期先天梅毒の場合は、すでに身体に何かしらの問題を生じている可能性があるため、完全な回復が難しいこともあります。

また、早期先天梅毒も晩期先天梅毒も、先天梅毒の症状は個人差が大きいため、全ての児が同じ経過を辿るわけではありません。

少しでも「おかしい」と感じたらすぐに受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

参考:先天梅毒診療の手引き2023

先天梅毒の赤ちゃんの寿命は、人それぞれ

母体が無治療の場合、4割の児が死に至る可能性があります。

ただし、先天梅毒の赤ちゃんの寿命は人それぞれです。先天梅毒の重症度や治療の時期などによって異なるため、早い段階で適切な治療を行えば、多くの確率で症状の軽減が期待できます。

一方で、治療が遅れてしまうと、合併症や後遺症のリスクが高まり、特に晩期先天梅毒の場合は生涯にわたって影響を受ける可能性があります。

そのため、発達の程度や他の合併症がないかどうか、定期的なフォローが必要です。

参考:先天梅毒児の臨床像および母親の背景情報(暫定報告).国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト

先天梅毒はうつらない

先天梅毒自体は、抱っこや一緒に遊ぶなどの日常的な接触では、他の人に感染することはありません。

しかし、早期先天梅毒の症状で現れる水ぶくれのような発疹や赤黒い発疹などに直接触れると、感染の可能性があるため、注意が必要です。

大切なのは、定期的な検査と継続した治療を受けること。

医師の指示に従い、受診するようにしてください。

まとめ

本記事では、先天梅毒の原因や見た目、症状について解説してきました。

先天梅毒は「梅毒トレポネーマ」という細菌が原因で、見た目は水ぶくれのような発疹と赤黒い発疹などです。

症状は多彩で、適切な時期に治療を受けないと症状の悪化や重篤な合併症を発症する可能性があります。

怖い病気に思うかもしれませんが、妊娠前から予防や治療をしておけば、先天梅毒のリスクを下げられます。

とはいえ、「梅毒かもしれないけど病院に行くのが恥ずかしい」という方もいるかもしれません。

そのような方には、自宅でできる性病検査があります。時間や羞恥心を気にすることなく、検査から治療までをサポートしてくれるため安心です。

気になる方は、ぜひチェックしてみてください。

  • この記事を書いた人

小渕 マヤ

病院勤務の傍ら、助産院事業の一環でフリーライターとして活動している現役助産師です。

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